欲しいものを手に入れる。
したいことにどんどん挑戦していく。そして今より「もっと」を求めていく。
その先にあるものとは。
欲に背中を押される生き方
欲しいものを買うために、働いてお金を貯める。そして、「したい」と思うことに次々と挑戦していく。
今の世の中は、常に欲望を刺激される社会だ。
「これでいいんだ」と満足するところがなく、1つの欲望を満たせば、それが次の欲につながっていく。
すなわち、目の前に人参をぶら下げられて、「今のままではまずい、もっと手に入れるべきものがある!」と常に欲望に背中を押されているのが私達の世界だ。
欲しいものを手に入れて、満足できるのはわずか一瞬。
すぐに、また新しいものが欲しくなり、今持っているものに満足できなくなってしまう。この状態にいる人は、常に満たされない人だ。
彼らは、つねに欲という刺激を与えられているので、決して退屈を感じることはない。そのかわり、心から満足することはできず、欲望から逃げることができない。
結果、どうなるか?
常に求め続けなければ、満足できない、常に走り続けなければ喜びを感じられないようになってしまう。
だからいつも何かに追い立てられ、心にゆとりがない。じっとしていられず、新しいもの、流行のものを求め、絶えず情報を求める。
もちろん、それは楽しいことでもある。それが続けられるうちは、それほど問題にはならない。行動すること自体、楽しく、刺激的に感じられるからだ。
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できることができなくなったとき
しかし、問題になるのは、欲望を実現できる運と健康が損なわれたときだ。
欲しい物を手に入れ、したいことを実現していく。それができるうちはいいが、何もかも思い通りになるほど、幸運は長続きすることはない。
欲に身を任すうちに、「したいのにできない」ということが、だんだんと増えていく。
加齢、体力の衰え、運の尽き・・・。人の可能性は有限だ。欲望は拡大していくが、人の行動は制限、限界がある。
そのため、欲望を追い求めても、だんだんと欲望を満たすことは難しくなっていく。そこで苦しみと不幸が生まれる。
欲望の使徒となっている人は、そこで不幸に片足を踏み入れてしまう。
欲しいけど手に入らない。
買いたいけど買えない。
したいけどできない。
目の前の人参が、苦しみの原因となる瞬間を目の当たりにする。
欲望は人の心を動かすが、決して心の中を満たしてくれることはない。欲望に突き動かされている限り、決して休むことはできないのだ。
上昇志向を否定しない
もちろん、その生き方が悪い、というとそういう話でもない。
なぜならそれは、人が本当の意味で成長するための、必要欠かさざるべきプロセスであるからだ。
常にもっとを求めていく。それは言い換えれば常に、新しい自分との出会いを求める刺激的な旅でもある。
それができる限りは、「もっと」を求める気持ちがなくならない限りは、上昇志向を持ち続け、前へ前へと進み続けることだってできる。
ただ忘れてはいけないのは、もうそろそろ、休もうと思ったとき。「これ以上は十分だ」と思ったとき。
そこが人生の転換点。上を目指すのではなく、別の道を探すことだってできる。
つまるところ、「もっと」を求めたいならそうすればいい。自分に嘘をついて「もう十分」と無理やり自分を納得させる必要はない。
むしろ、自分が完全に「もういい」と思えるまで、徹底的に上を目指すべきである。それを突き詰めれば、心から納得した上で次へ進む道が見えてくる。
それこそが本当の成長。欲求の階層が上がった証拠。そのときになって始めて、「もっと」を求めない生き方を模索する。
それこそが健全な成長のプロセスなのだ。