飢えているときにはまつわり付いて来て、満腹すれば飛び散ってしまう。
裕福なところへは集まって行き、落ち目になればすぐ見捨てて寄り付かない。これが世俗の人情の通癖である。
洪自誠
社会における人間関係の原則は「損得」である。
自分が得をする人には近づいていくし、一緒にいると損する人、一緒にいても意味がない人からは秒速で遠ざかっていく。
キレイゴト抜きに現実の人間関係を見ようとするならば、原則は真にシンプルである。
この意味で「あなたのため」は「わたしのため」。そう考えておけば、基本的に人間関係で失敗することはない。
つまり、なぜこの人はこのようなことを言うのか?あのようなことをするのか?
相手の立場になって、相手にどんなメリットがあるのかを想像する脳力さえあれば、だいたいのことが納得できる。
そう、原則はいつもシンプルだ。そして人に騙されやすい人は、この当たり前の原則を、忘れがちである。
甘い言葉を聞いたとき。射幸心を煽られて間違いを犯しそうなとき。
ぜひ人間関係の原則を思い出し、言葉や態度の裏側に隠されている相手の真意をじっと見つめよう。
だまされないために。何より、自分が本当に一緒にいるべき人を間違えないために。
出典
『菜根譚』(岩波文庫、1975年)