黄金の奴隷たるなかれ。
出光佐三
綺麗事抜きに人生はお金が必要だ。お金がない暮らしは最悪だ。
お金がないことによって、したいことができず、経験すべき体験をするチャンスを失い、不本意な仕事に甘んじ、お金に支配され、自分らしさを失っていく。
ただ生きていくためだけに、つまらないことを続ける人生。お金のためだけに働き続ける人生。お金がないということは、本当に辛い。
もしかしたら、人生お金がなくても生きていけて、お金よりもっと大切なことがあるのも確かかもしれない。
でも、衣食足りて礼節を知る、良い人生にはお金が必要なのも確かである。
イギリスの作家、モームもこう言っている。「貧乏は人間を貧しくする、お金が自分をもっとマシな人間にしてくれた」と。
だからこそ多少の金銭欲は、積極的に肯定していいのだと思う。
強欲が身を滅ぼす理由
ただ問題なのは、行き過ぎた金銭欲、守銭奴的なお金の奴隷になることだ。それは「お金の奴隷」と言ってよいような、過度の金銭欲である。
お金のために人を騙す。お金のために買いたいものも買わず、ひたすらお金をため込む。ケチになり人に不義理する。したいことを我慢しお金を集める。
お金がないはないで問題だが、守銭奴のごとく銭ゲバ―になってしまっても問題だ。
そもそも何のためのお金なのか。何のためにお金があるのか。そのお金で人生をどうするのか。
お金の奴隷になることは、本来忘れてはいけないことさえ忘れてしまう。だから最後に待っているのはまさに身の破滅であり、精神的な不毛である。
それはお約束の結果であり、全く意外性のない悲しい現実である。
目的を見失わない
人生絶対お金はあったほうが良い。
そしてお金と正しく付き合えば、自分、していては周囲を幸せにする。しかし不幸に付き合えば、自分だけでなく周りも不幸にする。
だからこそ黄金の奴隷となることなかれ。
お金は必要なだけ手に入れていい。せっかくの人生、お金の力で衣食住は事足りていい。
ただし何のために手に入れるか。何のために使うのか。その原則は絶対に、忘れないようにしたい。
だからこそ必要満足。幸せに付き合いたいものだ。
出典
『人間尊重七十年』(春秋社、2016年)