人生において、あれもこれも欲しいと言って駄々をこねるような人に時どき出会う。
また、自分の中にもそういう心がひそんでいるのに気がつくことがあるが、それでは欲が深すぎるというものであろう。
たいせつと思われるものが一つ二つでも与えられれば、あとは何とか工夫して欠乏に耐えて行くほかあるまい。
神谷美恵子
人の欲は限りがない。
これが欲しいと思って手に入れる。すると今度はあれが欲しいと欲がわいてくる。それを手にしたとしても、今度はまた違う何かが欲しくなる。
欲がわいてくる間、それを刺激に頑張るのはいいが、欲に支配されている間は、何を手に入れても、何を達成しても、「もう十分だ」と満足できることはないだろう。
もちろん、欲に背中を押される暮らしを体験することはそれはそれで意味がある。が、いつまでも欲に動かされていてはだめだ。
大切なのは、自分にとって何が本当に大切で、大切でないか、ハッキリとした基準を持つことだ。
最低限大切なもの、絶対に必要なものは手に入れていい。しかし、必要以上の欲を持っても仕方ない。
欲が誇大化すれば、やがては大切なものまで失うかもしれない。欲を持つのもいいが、ほどほどにしておくことだ。
出典
『神谷美恵子の言葉』