私たちは人生において、欲しいものを手に入れ、理想の自分になり、最高のライフスタイルを送ることが幸せだと考えている。
ところが、何もかもうまくいっている人生よりもむしろ、うまくいかないことの方が多い人生の方が、満足度は高くなる。
何を手に入れようと、何を実現しようと、それが日常となり当たり前となってしまえば、そこに価値は感じることができなくなる。
だから、やることなすことうまくいく。お金が腐るほどあって何もかもが手に入る。そんな日常が続いていれば、幸せを感じられない不幸体質まっしぐらである。
「最高」も繰り返せば「普通」になる
あなたがもしそのことを実感したいなら、1つおすすめの方法がある。
まずあなたは20万円を用意して、「料理が美味しい」で有名なホテルを5日間予約する。そしてホテルに滞在し、朝に夜、素晴らしい料理に舌鼓を打てばいい。
初日はまさに、その素晴らしい料理に最高の気分で満足することができる。2日目もまだ、その美味しさに感動できる。
しかし3日目になると、「料理の美味しさ」に慣れてしまって、その喜びや感動が、薄れていることに気づく。
そして4日目になると、もはや当初の感動は薄れ、美味しいは美味しいけれど、それに満足していない自分に気づく。5日目はもう、うんざりしていることだろう。
つまり何が言いたいのかというと、人はどんなことにも慣れる、ということである。
どんなに「最高」を味わっても。それが続けば「当たり前」になり、「最高」ではなくなってしまう。それが人間というものである。
「人生これでいい」と安心できない理由
あなたが人生を最高のものにしたい。素晴らしいものを手に入れて、理想の人生を実現したい。そう心に近い努力する。そして努力が実り、理想の生活を手に入れる。
最初はその素晴らしさに酔いしれることができる。「自分はやったんだ!」と誇りを持つことができる。
しかし。
しばらくすれば、その素晴らしい生活も「当たり前」になる。すると、当初の刺激。喜び。満足度。すべてが色あせていることに気づく。
そして、まだまだ自分の人生が不満足なように思えて、また新しい何かを探しに行く。それは「きりがない」ということに気づくまで、ずっと続くプロセスである。
それに気づかない限り、決して「これでいいんだ」という人生の安心感を手にすることはできない。
常に何かを求めている。何かに追われている。そういう暮らしが、ずっと続く。
幸せは毎日感じない方がいい
これが人間のサガである。どんなに最高の体験をしても。最高の物を手に入れても。それが二度三度続けば、喜びは薄れ、満足感を感じられなくなってしまう。
だから、私たちはお金持ちになって成功し、今よりもっと良い暮らしができても、本当の意味で満足することはできない。
何を手に入れても、何を実現しても、それが当たり前になって、必ず飽きる。この意味で、人生何もかも手に入れることができる生き方は、ある意味不幸である。
それよりも、人生が基本的にうまくいっていなくて、お金がなくて欲しいものを今すぐに買うことができない。時間も不自由で、ゆったり自分の時間さえ確保できない。
そんな不自由な人生の方が、逆説的かもしれないが、大きな満足感。大きな幸福感を得ることができる。
この意味で、人生何もかもうまくいっているよりも、「ほどほど」うまくいくほうが、ある意味ずっと幸せである。
最後に
もしあなたがお金に時間、人生に制限があって、不自由さを感じているなら、むしろ不自由さに気づくチャンスである。
使えるお金が限られている。だからそのお金のなかで買えるものに価値を感じることができる。
自由な時間が限られている。だから、その自由な時間を、より大切に味わうことができる。
そう、人生においてマイナスはマイナスではない。プラスは必ずしもプラスではない。だから、ほどほどうまくいけば、人生はそれでいい。
ただ1つ言えるのは、人生良いことだらけ。何もかもうまくいく。欲しいものは何でも手に入る。すべてが自分の思い通りになる。
そんな人生はつまらない、という話だ。