ひとを恋する心は 咲いてはしぼみ また咲いてはしぼむ
死ぬまでそれをくりかえす
恋する心の歓びと悲しみの さだめを知り
わたしは人知れず 血を吐きつづける
ハインリッヒ・ハイネ
誰かに恋をする。
それは甘く、幸せの匂いがするものだが、実際のところ、誰かに恋をするということは、歓だけで終わることはない。
恋には苦しみが付きまとい、場合によっては、「恋なんかしないほうがマシだった」と思うくらいの苦しみが与えられることがある。
恋に苦しみ傷ついて、「こんなに苦しいならもう恋なんてしなくていい」と思っていたとしても、まるで交通事故に遭うかのように、突然誰かに恋をする。
誰かを好きになろうと思って好きになるわけではない。なぜなら恋はただ「落ちる」ものだからである。
恋は自分の意志や努力とは無関係で、決して思い通りになることはない。だから場合によっては、恋によって心から傷つく。
(むしろ好きで好きでたまらない人ほど自分のものにならない。)
好きになるだけなら苦しみはない。しかし、恋することは苦しみだ。だからこそ私たちは、誰かを好きになる意味がある。
それはやがて、愛の花になる可能性を秘めているのだから。
出典
『読まずには死ねない世界の名詩50編』