人は、利益や、損得に振り回されるものです。しかし、ときには信念に突き動かされることもあるのではないでしょうか。
里見脩二
世の中の人間関係で失敗しないために大切なのは、基本的に人が欲や利益で動く、という現実を忘れないことである。
つまり、人に一方的な善意や正しさを要求することは間違いであり、世の中の仕組みはそのようになってはいないのである。
人はみんな自分が中心
基本的に人はみな自分のことが最優先であって、自分の利益のために、日々人生を生きている。
だから自分の利益のために周りの人を蹴落とすし、ウソをついて、利益誘導をする。実際問題、人を傷つけることに何のためらいも覚えない人だっている。
この意味で、世の中から競争がなくなることは絶対にないし、みんながみんな、完全に幸せになれる世の中は絶対にありえない。
もしそんな理想的な世界が実現するとしたら、今すぐこの世界から、ありとあらゆる不幸が一瞬で消え去るだろう。
誰かを信じる理由
ところがである。
自分のことばかり考えて、利益のためには手段を選ばない人々が争いあう一方で、自分の得など考えず、一人の人間として崇高に生きんとする人がいるのもまた、事実だ。
正しいと思うことを実践する。自分が損をしようとも、自らの信念に基づき、人としてまっすぐに道を進んでいく。そういう人が、世の中に存在するのもまた確かだ。
だから世の中は面白い。たとえ人間不信になったとしても、まだ誰かを信じていい理由が、そこにある。
すべては個人のチョイス
別に綺麗事を言うつもりはない。人は利己的だ。自分勝手で自己中だ。
しかしそれでもなお、自分以上に他の誰かを思いやれる。正しいことを正しいと信じて前へ進む。そんな人だってこの世の中にいる。
そのことだけは、覚えておいて損がない。そして、自分がどちらの人になるのか。その選択肢はつねに、自分で決めることができるのだ。
だからこそ人生は常に、自分自身に選択肢がある。
最後に
「人は崇高な存在である。そして人の本性は善である」と理想を信じることは、個人のチョイスではある。
しかし現実的な話として、人にはどう見ても善とは言い難い部分があるのもまた、事実である。この点、理想は理想、現実は現実として、真っ直ぐに真実を見つめたい。
同時に、現実の向こう側にあるものを見据え、自分が信じるものを信じることも大切だ。もしかたらそこにこそ、人が人である、本当の意味が実感できるかもしれないのだから。
出典
『白い巨塔』(2003年、フジテレビ)