名将とはいちどは大敗北を喫した者をいう。
朝倉宗滴
人生できれば平穏無事、失敗や挫折の苦しみを味わうことなく、何もかも上手くいくような順風満帆の人生を歩みたい。
ところが人生において一度も挫折を経験しないことはとても危険である。というのは、挫折によって人は磨かれ、あるべき自分を見出すことができるからである。
話はこういうこと
挫折体験とはいわば、自分の無力さ、限界を嫌というほど実感させられる強制イベントである。
それは確かに苦しく、不愉快なもので、自分のプライドや自信を木っ端微塵。粉々に粉砕されることも少ない。その挫折によって理想の人生を生きることをあきらめることはとてもかんたんである。
しかし実際のところ、挫折体験は「あなたはダメです」を実感するだけのイベントではない。それは「自分のダメな部分」や問題を認識し、改善するための様々な気づきを与えてくれる重要なチャンスである。
かんたんに言えば挫折とは人生におけるマイナスの恩人である。
挫折しなければ気づかなかったことに気づき、改善していく。それによって将来、今よりずっと輝かしい未来へと進むことができる。
この意味で大切なのは、挫折から学んだことを未来に生かすことである。これは別になぐさめでもなんでもない。長い人生における厳然たる事実である。
最高の人生を生きるためには逆説的だが、最悪の挫折が必要なのである。つまり挫折があるからこそ、最高の気づきが得られ、最高の自分になり、最高の人生が待っているのである。
本当に怖いのは挫折で打ちのめされることではない!
また、挫折を経験することは人としての格を高める修養の機会でもある。
挫折し心折れ、自分を低みに置くことによって、生きていくことの不合理さ。理不尽さに対する耐性もつく。
人生は思い通りにならない。そして嫌なことがたくさんある。そんな失望を味わっておくことが、絶望に負けないための力となってくれる。
挫折したとしても、その必要性を認識、正しい心的態度を取ることによって、このような素晴らしい特典をたくさん受け取ることができるのである。
一方で本当に悲しい、というか不運なのは、人生において挫折を経験しない順調すぎる人生である。
特に、10代20代30代。若く心の弾力性もある時期に、生きていくことの絶望を知ることなく世の中を小賢く生き抜き、40代50代を迎える人は不運である。
なぜなら挫折を経験していないがゆえに、その耐性が身につかず、たった一度の失敗が致命傷になる危険があるからである。
日本のケースで言うと、受験、就職、仕事、恋愛、何もかも上手くいき、「周囲や社会の求める通りの生き方に成功してきた」人は特に危険である。
ほんの小さな歯車の狂いによって、その後の人生が大きく狂ってしまう可能性が高い。
人生に打ちのめされる強み
一方、この記事を読んでいるあなたが長らく失敗続きで今後の人生に絶望しているなら。あなたは正しい認識を持つ必要がある。簡潔に言って、あなたの将来には期待が持てるのである。
あなたは自分の挫折体験から必要な気づきを得て、そこで謙虚にあなたの成長に必要な修養を積むことによって。それまでの人生が決して無意味でなかったことに気づくときが訪れるだろう。
それだけでなく挫折によって心を折られ絶望を味わったあなたなら、人生のマイナスに対する様々な耐性もつき、ちょっとやそっとでは動じない、強い精神性が身についている。
あとは自分を信じて、人と比べずあなたの生き方を探せばいい。今までの損を無理なくあなたのペースで挽回していけばいい。なぜなら人生は帳尻が合うようになっている。少しづつ、今までの損を取り返していこう。
それは必ず取り返せる!
重要なのは挫折と向き合う心的態度
とはいえ注意したいのは、その挫折を自分の成長の機会として生かさず、人や社会に対して恨みつらみを抱いてしまうことである。
確かに挫折体験は心折られネガティブな気持ちを蓄積させてしまうことは仕方がないことである。
しかし問題はその感情の使い道である。どうせネガティブな気持ちを抱くなら、そのダークなエネルギーをあなたの人生を良くするために使うほうがいい。
あなたは知っているだろうか?
いわゆる成功者と言われる人の中には、「あいつは俺を馬鹿にしやがって!見返してやる!見てろ!」など、ダークパワーを自分の成功のためのエネルギーに変えて人生を挽回した人が少なくないことを。
貧乏な暮らしを味わったこと。学歴がなく馬鹿にされたこと。異性にモテなかったこと。ネガティブな挫折は「何くそ!」というダークパワーを原動力に変えて、爆発的な行動力に変えていくことができるのである。
ただし、そのエネルギーを使い続けることは危険だが。
最後に
挫折を経験したとき重要なのはあなたの行動である。
あなたはその経験を自分を成長させ、人生をより良いものにするための成長期間と捉えることもできる。あなたはその経験を誰かのせいと考え、恨みつらみを抱くこともできる。
しかし、本当にあなたが自分のためになる人生を生きるなら。その挫折は決して無意味でもないし、ひたすら理不尽な経験でもない。あなたが必要なことに気づき、成長や修養の期間と捉え謙虚に前進するなら。
必ずその苦労のもとはとれる。いつか然るべき絶好のタイミングであなたは胸を張ってこう言える。「あの挫折があったからこそ、私の人生は今最高の瞬間を迎えています!」と。
出典
『家訓で読む戦国』