まだ慌てるような時間じゃない。
仙道彰(『スラムダンク』より)
不思議な話だが、人生にはまさにドンピシャで悪いことが重なるように起こるときがある。
そこで大切なのは、何よりもまず冷静になることである。悪いことが続き、嫌なことが重なったときは、まずこう考えるとよい──「まだ慌てる時間ではない」と。
ここで是が非でも避けたいのは、「今」を冷静に見ることができないほど、心がグラグラになってしまうこと。すなわち、心の余裕を失ってしまうことである。
だからこそ、このセリフをまだ口にできるなら、まだ大丈夫である。それは、最悪な状況ではない。焦る必要はまったくない。一息ついて落ち着き、冷静さを取り戻していこう。
はじめに
悪いときには、なぜか悪いことが重なりやすい。これは、人生の現実である。
悪いことが起こったときに避けたいのは、それを連鎖させてしまうことである。だがそれは、多少の心構えと冷静さがあれば、対処できることが多い。
しかし、悪いことによって心が動揺してしまうと、その動揺がさらなる悪い出来事を引き寄せてしまう。だからこそ、まず悪いことが起こったときには、「まだ慌てる時間ではない」と自分を落ち着かせることが大切である。
気持ちが落ち着き、状況を冷静に見渡すことができれば、悪いことが起こっても、そこで止めることができる。気持ちを切り替え、仕切り直すことができるのだ。
仕切り直しをすることにより、感情の冷静さを保つことができる。これは、悪いことが重なったときにおいて、非常に重要なことである。
何があっても自分を、見失うな。
「最悪」があるとするならば、それは自分自身を完全に見失ってしまうことである。
起こった出来事によって感情がぐらつき、自分を見失っているとき、私たちは自分でも信じられないほどに、間違った選択をしてしまう。特に、悪いことが連鎖しているときには、それに対して無表情でいることは確かに難しい。
だが、繰り返す。感情は恐ろしい。動揺しているときの自分は、想像以上に「自分」ではない。そこで感情のままに間違った行動をしてしまうくらいなら、一度立ち止まったほうがよい。
だからこそ、自分の感情をモニタリングすることが必要である。「慌てるな」と一言、自分に声をかけるだけでよい。完全に冷静になることが難しくても、自分自身の状態を客観視することくらいは、できるようになるはずである。
「痛み」は最小限に抑える。
悪いことが起こる。感情がゆらぎ、冷静さを失う。すると不思議と、さらに別の悪いことが発生し、状況は一層混沌としていく。これが、一つの典型的なパターンである。
この状況で私たちにできる唯一のこと。それは、自分を落ち着かせることである。目の前の現実はすぐには変わらない。だが、少なくとも自分を落ち着かせることで、その場に踏みとどまることができる。踏みとどまることができれば、そこから立ち上がる道が開かれる。
「悪いことが起こってしまった」という事実を取り消すことはできない。だが、「その後」の私たちの在り方によって、そのダメージを可能な限り軽減することはできる。だからこそ、慌ててはいけない。
痛みは最小限に抑え、その後に挽回を狙えばよい。自分を見失いさえしなければ、状況を自らの手でこれ以上悪化させなければ、それはやがて可能となる。
最後に
個人的な話になるが、私の人生には次のような出来事が起こった。
まず、人間関係のトラブルが発生した。その対処を始めた翌日、長年付き合いのある取引先から連絡が入り、「今後の契約を見直したい」と告げられた。その結果、当時の主要な売上を喪失することとなった。
問題はそれだけにとどまらなかった。その1週間後、今度は私自身が、17歳のときに患った腰痛を再発し、体を動かすのもやっとという状況になってしまった。
人間関係の問題が起こり、ビジネスの問題が重なり、極めつけに健康の問題が襲ってきた。
言うなれば、トラブルが連鎖してやって来たのである。「なぜ今、それが起こらなければならないのか」と思うほど、「絶妙なタイミング」で問題が続いた。
これは過去の話である。それはすでに終わった。そして私は今も生きている。確かに、失ったものは少なくない。だがその一方で、新たに得たものもある。
人生とは、きっとそういうものなのである。
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