ある事柄に対する「怒り」は最も明晰にその人の生き方を露出するのだ。
ある人が何に対して怒り何に対して怒らないか、何に対して猛烈に怒り何に対してわずかにしか怒らないかが、その人の最も深い信念を示してくれるのである。
中島義道
自分が人生で何を大切にしているか。それに気がつくためには、どんなことに腹を立てるのか、怒りがわいてくるかに着目すると良い。
怒りというのは、自分の考え、信念や価値観を冒涜されたことによってわいてくる感情だ。
誠実さを大切にする人は、不誠実な相手に激しい怒りを感じるだろうし、時間をきちんと守る律儀な人は、時間にルーズな相手に腹を立てるだろう。
このように、「この野郎はムカつくぜ」という怒りの根本にあるのは、自分が大切にしているものを侵害されたことによる怒りなのだ。
だから、普段自分がどんなことに対して腹を立てるのかを確認することで、自分が大切にしているもの、価値観、考え方が見えてくる。
平和主義で生きる
自分が一体何に腹を立てるのか。自分をムカつかせる人はどんな人なのか。
それが分かっていれば、人間関係で大きな失敗をすることもないだろう。腹が立つような相手に対して、距離の取り方も上手くなってくる。
価値観の違う相手とは無理に馬をそろえようとせず、上手く距離をおけるようになってくる。割り切りができてくる。こうなってくると楽だ。
馬の耳に念仏、相手に期待しないから、「この人はなんでこんなことをするんだ」とイライラすることもなくなってくる。
出会う人全てと仲良くすることは難しい。だからこそ、自分はどんなことを大切にしているのか、それを共有できる人は誰なのか、しっかり見極めていきたい。
棲み分けでストレスフリーの人生を実現する
怒りをきっかけにして自分が大切にしている価値観を理解する。
そうすれば人は人。自分は自分で、他人の価値観を尊重しつつも、自分がいるべき場所。付き合うべき人たちに近づいていくことができる。
「棲み分け」という言葉があるように、やはり世の中大切なのは、自分と近い人たち。理解し合える人たちと一緒に暮らしていくことである。
そうすれば、無用な争いも起きないし、理解できない人を理解しようとするムダな努力からは開放され、人生が自由になる。
この意味で何かに腹が立った時。どうしようもなくムカつくことが起こったとき。それはある意味チャンスである。
自分の価値観。大切にしているものを理解して、それを尊重できる方法を探るのである。
出典
『過酷なるニーチェ』