昔から「勝敗は時の運」というように、勝つときもあれば負けるときもある。だから、負けたからといって、相手を憎むのはナンセンスである。負けたのなら潔く負けを認めて降参すればいいだけのことなのだ。
渡部昇一
人生において常勝は不可能である。
つまりやることなすことうまくいく。一度たりとも失敗せずに、何もかもがうまくいく。そんな人生は不可能である。
逆に言えば、人生で負けて当然。何度も失敗することがむしろ当たり前なのだ。この意味で本当に大切なのは、人生で失敗したとき。敗北したときの態度である。
「俺は負けてなんかいない」というように敗北を認めず見苦しい態度を取るか。それとも潔く「俺は失敗しました」と認めるか。
その差は周囲の心象という意味では、果てしなく大きな差がある。
失敗を失敗と認めて素直に自分の非を認めれば、「失敗した」事実を受け入れることだが、周囲の人はその潔い態度に、反感を持つことはないだろう。
だからかりに失敗しても、またチャンスを与えてもらえる可能性だってある。
しかし、自分の失敗を頑として認めない。間違いを否定して、あたかも自分こそが正しいとする態度は、周囲からすれば傲慢で、ただ見苦しいだけである。
この意味で、失敗したときに真の人間力が試されるのは間違いがない。
失敗したら失敗したで、負けたら負けたで、余計な言い訳をする必要はない。素直な態度を示して、グッドルーザーになれば良い。
くれぐれも、くだらない言い訳をして、「敗戦処理」を誤らないことである。
出典
『渡部昇一の思考の方法』