人は誰でも自分を守ろうとする。そこで起こる心の働き

横を向く女性

人は誰でも、「そこを突かれたら弱い」という部分がある。

意識するしないに関わらず、人は誰もが自分の弱みを攻められることを恐れている。その恐れや不安が、人によっては過剰な反応として表現される。

例えばあなたの職場にもいるであろう、やたらと他の人に対して威圧的に振る舞う人、攻撃的な発言を繰り返す人を思い浮かべてほしい。なぜ彼らがそのような言動を行うのかというと、彼ら自身がその表面とは裏腹に、とても脆い部分を持っているからである。

他人に攻撃されたり馬鹿にされたりしたら、自分がいとも簡単に揺らいでしまう。自分の安全が脅かされてしまう。そうされないための過剰反応として、威圧的な態度や攻撃的な態度が常態化しているのである。

それは彼らが自己の心の安定性を守るためである。こうした反応を心理学では「防衛機制」と言う。

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はじめに

人は誰でも、自分を守りたいという本能を持っている。そして私たちには自分の心を守るため、嫌な気持ちを感じにくくするために無意識的に行動をする。

例えば仕事で失敗してしまったとき。ほんとうは自分のミスで失敗してしまったのに、自分でそれを認めてしまうと自分が傷ついてしまう。嫌な気持ちを感じてしまう。そこで、「ミスの原因は◯◯です」と他に原因を置き換える。

他人に意地悪なことをしている人ほど、「自分が人に嫌なことをしている」ということを認めたくないので、「正義は我にあり」と誰もが反論や否定ができない正論を持ち出し相手を黙らせようとする。

自分自身は何もせず自分自身と現状に対して不満を抱えている人が、ポジティブに生きている人や現状を変えるために行動している人に対して、やたらとネガティブな反応を示す。

これらは防衛機制の典型的な働きであり、その目的は明確である。自分の心の安定を守るためである。

行動の根っこにあるもの

「あいつが先に手を出しました、だからあいつが悪いです」

問題が起こったとき、物事の是非を判断するためには「当事者両方」の話を公平に確認する必要がある。AさんとBさんとの間にトラブルが起こったとき、Aさんの話だけを聞いて「Bさんが悪いです」と判断するのはあまりに不公平である。

だが現実問題として、本当はAさんが悪いのだけれどAさんはじめその仲間が周りに「Bさんが悪いです」と吹き込むことによって、事実が見えにくくなるということはしばしば起こる。

Aさんが問題の火種をまいたが、Aさんは「自分が原因を作ったことを認めたくない」という心理が働き、「Bさんが悪いです」と責任を転嫁する。

後ろめたいことをする人ほど言っていることとやっていることが違う傾向が強いことは知られているが、その根っこにあるニーズは「自分を守りたい」という心理的な理由である。

その行動には理由がある!

「無意識」という言葉があるように、私たちはそれを意識しようがしまいが何らかの動機、原因によって動かされている。特に「自分を守りたい」という心理的な働きは、それが表面に露出する。

「敵を知り己を知らば百戦危うからず」という古典の名言は現代の日常生活においてもとても有効である。それは自分視点のみならず他人視点で、「なぜ」を考える習慣の大切さを私たちに教えてくれるからだ。

人の行動には当人がそれを意識するしないに関わらず、何らかの目的がある。

部長があなたの仕事ぶりを酷評するのは必ずしもあなたの仕事に問題があるからとは限らない。パートナーがあなたに不満を言い続けるのは、あなたに良くなってほしいと思っているからとは限らない。

彼らがそれをするのは、彼らがそれをする必要性があるからなのである。だからこそ見たくないものが見えないし、認めたくないものを認められないのである。

最後に

「なぜあの人は、あのようなことをするのか?」

この疑問に対する答えを持つことは、人間関係をより平穏にするための重要な視点である。

私たちは人と人との関わりのなかで生きていく。そして、人生で生じる大半の悩みの原因が人間関係に起因する。「幸せは人を通じて運ばれてくる。不幸せも人を通じて運ばれてくる」というのは、まさに至言である。

結局私たちは自分は自分と割り切っても、他の人との関係を断ち切ることはできないし、他の人からの影響を全く受けずに生きていくことはできない。だからこそ大切である。自分自身のことを始めとした、人の心の働きに関する知識を持つことが。