散る花を追うことなかれ、出ずる月を待つべしじゃ。
本多静六
人生はタイミングである。そこを間違えさえしなければ、実力努力その他+アルファは、おまけとまで言える。
タイミングが合えば物事は驚くほどうまくいく。うまくいきすぎる。だからこそ、いつでもどこでも100%の力を出す必要はない。人生は短いようで長い。タイミングが合わないときは力を抜き、淡々と必要な準備をしつつ、静かに好機を待つのだ。
はじめに
「いつやるの?今でしょ?」という名言があるが、個人的にこの言葉はとても好きだ。
行動なくして結果なし。数億円の大金が転がり込んでくる宝くじに当選する確率は、1年間で交通事故に遭う確率よりもはるかに低いが、購入しなければ当選する確率すら生じない。
それを「やる」か「やらない」かという自分の意思決定が未来に影響するという意味で、この言葉は私たちに行動することの大切さを教えてくれる名言である。
ただし、当たり前かもしれないが、何でもかんでも今すぐやればいいという話ではない。
物事にはタイミングがある。タイミングが悪ければ今すぐそれをしたところで、行動が必ずしもプラスには働かない。むしろ場合によって行動の結果マイナスになることもある。
時と場合によっては、やるよりもやらない方がいいというケースもある。
人生には波がある
占いの世界では「天中殺」という概念がある。それは12年に1度、2年間訪れる(1年に2ヶ月、12日のうち2日)もので、
「天が味方してくれない時期だから、自分から積極的に動かくのはよくない時期です。ジタバタせずに控えめに過ごしましょう」
という期間である。
科学的な根拠を求めればそれは迷信と判断されるものかもしれない。だが大切な本質は、「天中殺が事実なのか迷信なのか?」という話ではない。
重要なのは、
「私たちの人生には波があって、良い時期があって、そして悪い時期があるから、行動のタイミングには気をつけましょう」
という視点である。
「静かにタイミングを待つ」という知恵
理屈はわからない。しかし実際問題、人生には良いときだけでなく悪いときがある。
悪いときに行動したときはうまくいかない。それだけならまだいい。問題は、悪いことが芋づる式に悪いことを引き寄せる悪循環につながることである。
この意味で、長い人生を生き抜くための必須のスキル(とあえて言う)の一つは、自分の波を感じ取る力である。
タイミングが合わないなら(それを追いたくても)無理に追わない。何をやってもうまくいかないならいっそ何もしないでじっと過ごす。
極めてシンプルな話だが、人生の波に合わせて柔軟に身を処すことは本当に大切なことである。当メディアで「頑張れないときは頑張らなくていい」と伝えている根拠がこれである。
頑張れないとき。何をしても行動が裏目に出るのはそういうタイミングだから。そんなときは静かに「時を待つ」。そうした時期を経ることも、長い人生の一部である。
最後に
先日、2年近く保有していたとある企業の株を売却した。
購入時、「その企業が本来持っている価値」が著しく評価されない底値の時期に購入したのだが、ようやく状況が変わり企業価値が評価される上昇トレンドに突入。株価が再び、本来の水準に戻ってきたので、株を手放し利益を確定した。
私が購入した時より株価が1株あたり500円以上。およそ1.3倍に値上がった状況だったが、これは「機を見るに敏」という話ではない。本来の価値よりも大きく下がっていた株価が「以前の水準」に戻っただけの話である。
どうしようもない「外的要因」によって物事が大きく変動する。これは株価に限らずあらゆる物事にもあてはまる、この世の避けられない定めらしい。
下がっているときに今すぐ上げようとしてもそれは無理である。私たちにできるのは、再び上がるタイミングを待つことである。
出典
『私の財産告白』