この世には何十回あっても、相手の存在が自らの人生に何の痕跡も与えぬ人がいる。その一方、たった一回の邂逅が決定的な運命をもたらす相手もいる。
遠藤周作
日々顔をあわせても全く人生に関わってこない人。たった一回会っただけで、運命に致命的な影響を与える人。
人生にはいろんなレベルのご縁があるが、人とのご縁というのは、つくづく不思議なものだと思う。
文字通り人生は、人との出会いで決まってしまうところが確かにあって、その人と出会うか出会わないか。それによって人生は、全く別のものになってしまう。
出会うには出会うなりの理由がある！
人との出会いにおいて、個人的に強く実感していること。
それは、人生に影響を与える度合いが強い重要な人との出会いほど、自分の意図ではない必然的な出会いを感じる、ということだ。
出会おうと思って出会ったのではない。不思議な流れでなぜか自然と出会った。そして、その人と出会ったことによって、人生が完全に変ってしまった。そういう感じがしてならない。
逆に、自分が「出会いたい！」と意図を持って作った出会いほど、数年もすれば、ご縁がなくなってしまう人が多いように感じている。
こちらが意図をしなくても続いていく縁と、意図を持っても消えてしまう縁。人生に大きな痕跡を残す縁と、ほとんど意味を成さない縁。
それを運命と言うのか何というのかは分からないが、だからこそ、人の不思議さに、驚愕せざるをえない。
出会ったご縁をムダにしない
何せよ、人生で出会うべくして出会う人とのご縁には必ず意味がある。
目の前の出会いに何らかの必然性を感じたならば、その縁を大切にして、流れに任せてみる。するとそこには何らかの意味。必然性があったことに気づく。
かりにどんな嫌な人であれ。短期間で別れてしまった人であれ。その人と出会うなりの理由が見つかる。そして、人生で出会う人には出会うなりの理由があることに納得することができる。
この意味で、決して人とのご縁は、良縁であれ悪縁であれ、無意味な出会いは一つもない。大なり小なり、そこには必ず、意味がある。この世で出会ったことそれ自体、意味がある証拠なのである。
最後に
今日も私たちは、どこかで誰かと出会っていく。
その出会いの一つ一つは大きな意味を実感できない出会いかもしれない。しかし、その出会いと向き合うことによって、運命は動き出す。それはやがて、人生を完全に変えてしまう出会うべき人との出会いにつながっていく。
こうして人生という物語は、出会いによって紡がれていくのである。
出典
『生き上手死に上手』
