大きな強みを持つ人は、ほとんど常に大きな弱みを持つ。山があるところには谷がある。しかも、あらゆる分野で強みを持つ人はいない。
ドラッガー
人間には生まれついての能力の差がある。
ある人はスポーツが誰よりもできる。勉強がラクラク身につく頭のよい人もいる。だが、勉強もスポーツも、お金も成功も、異性運も家族運も、全てが上手くいく人はほとんどいない。
お金をたくさん稼いだ経営者が、家庭内で冷や飯を食べさせられていること。会社で結果を出して威張っている上司が実は、妻や子どもの家庭内暴力の被害者に合っていること。
何かで突出している人は、見えないどこかで、突出している代償を支払っているのだ。
なぜ「無職」の中年男が覇者になれたのか?
能力がなく、人生がツイてないだらけのように思える人でも、必ず突出できる部分はある。そこが人間の面白いところだ。
昔、漢という国を作った劉邦という男がいる。この男は、今でいう無職ニートで、40歳近くまでブラブラ、まわりの人にたかって酒を飲んでいるようなダメ人間だった。
しかし彼には人に好かれるという能力があった。そして彼のもとには優れた人間がたくさん集まってきた。
彼らの能力をつかいこなすことで、中国を統一、無職ニートから王様になった。劉邦自身の能力は低かったが、優秀な人をつかいこなす能力があったのだ。
自分はダメでも他の人を生かせる。これも1つの能力である。
マイナスをプラスに変えるヒント
大切なのは、自分のマイナスをあげつらうことではない。それをしても、決して自分の良さを引き出すことはできない。
そんなことをするヒマがあるなら、自分のどの部分がプラスになるのか。自分のマイナスをプラスに変えるにはどうすればいいのか。それを真剣に考えることである。
例えば、1日中家に引きこもりパソコンでネットばかりしている人。
これは、一見グータラに見えるが実は1日中ネットができるというのは才能の1つである。それは、1日中パソコンをして食っていける方法を見つけろ、というサインである。
このように、自分の「ダメ」に思えるところでさえ、実はそれが、自分を生かす道であることが分かる。
今自分に与えられているものには意味がある。ダメなところがあるのは、いいところがある証拠。大切なのは、それを生かす方法を見つけることである。
出典
『プロフェッショナルの条件―いかに成果をあげ、成長するか』(ダイヤモンド社、2000年)