一夜明ければ成功者、などという話は転がっていないものだと理解するところから始めよう。
名声と幸運が一気に手に入ることもあるかもしれないが、たいていはその前に、長い、困難な、誰にも感謝されない厳しい努力と献身の道のりが待っている。
長期に渡って努力し続けるつもりがないなら、もっと手の届きそうな目標に切り替えることをお勧めする。
『面白い物語の法則<下>』P198より
世の中にはあれよあれ。いわゆる下積みもなしに人々から注目され、短期間で誰もが仰天するような「実績」を作り上げ、「あっ」という間に輝かしい成功をおさめる人がいる。
きっと世の中にはほんとうに、すごい人がいるのだろう。でもだからといって、「私だって短期間で成功できる!」と考えるのは早計である(その考えは自我の肥大化を示す兆候なので注意が必要だ)。
私を含む世の中の99%。つまり大部分の人にとって、夢や成功をつかむ方法があるとすればそれは一つだけである。長期間に渡って誰にも知られない努力を自分自身を信じて継続していくこと。それだけである。
夢はかんたんには実現しない。成功は遠い道の先に待っている
努力は結果を裏切らない。ただしそれは「努力を継続できるなら」という条件がつく。
あなたも何かに挑戦した経験があるならきっと、「努力してもかんたんに現実は変わらない。むしろどれだけ努力を続けても、その意味を実感できなかった」という思いを噛み締めたことがあるかもしれない。
でもそれは、あなただけの話ではないのだ。あなただけでなく、世の中の99%の人が、「努力してもかんたんには変わらない現実」を常日頃から実感させられる。それがこの世界なのである。
だから間違っても、努力さえすればかんたんに現実が変わること。夢をつかめること。成功できること。理想の人生を実現できること。なんでもいいが、「過剰」な期待を持たないことである。
問われるのはあなたの気持ちの強さ
ただ朗報がある。それは、「世の中は密かに努力を続ける人をいつまでも下積みに甘んじさせることはない」という事実である。
いつそれが起こるかはわからない。しかしあなたがほんとうにそれを実現したいと「強く」想い、誰に何と言われようと、現時点でどのような評価を受けていようとも、自分自身を信じて日々やるべきことを少しずつでも継続していくならば。
あるタイミングに差し掛かった段階で、まず最初にあなた自身が気づき始める。あなたを取り巻く空気が変わり始めたことに。
するとあら不思議。今まで無駄と思われてきたあらゆる試み。あらゆる努力が、実はそれをすることに大きな意味があったことに、気づかされるのだ。
想像してみてほしい。あなたは歌手として舞台に立っている。しかし観客は誰もいない。それでもあなたは歌い続ける。すると1人。2人。少しづつ、あなたの歌を聴く人が、増えていく。
だからこそ本当に問われる問題は一つだけである。あなたが本当にそれをしたいのかどうなのか。その一度限りの人生でそれを実現したいのか。それだけである。
最後に
現実を変えたいなら。つかみたい夢があるなら。
私たちはそれを今すぐ、短期間で、かんたんに実現できるという期待を捨てる必要がある。そして長い長い夜を、やがて朝を迎えることを信じ、一人で孤独に過ごすことを、覚悟する必要がある。
「そんなことはしたくない」というのは個人のチョイスである。
夢をつかもうと努力するより、今与えられているものに満足し、妥協して生きていくことも、現実的な選択の一つである。不満はあるけれどほどほど満足できる。そんな人生だって、それはそれで十分である。
だがもしあなたがその人生で「最高」を期待するなら。それ相応のテストをクリアする必要がある。あなたがごく少数に該当する、幸運な人でない限りは。