成功するには野心が必要だ。でも野心なんて馬鹿げたものだ。
ゴッホ
人生で叶えたいことがある。今よりもっとマシな暮らしをしたい。幸せに暮らしたい。だから人生で成功したい。
これは何も恥ずかしいことではなく、人が人として生まれた以上、自然発生的に持ちうる、当たり前の願望である。
この意味で、人生で成功を目指すことは当たり前のことだし、それを恥ずかしいことのように思う必要などない。
ましてや、「自分が成功を目指すなんて、大それたことだ」と、自己卑下する必要もない。
ただ、その願望を実現するために自分ができること。すべきことに努力をコミットしていくならば、成功するしないに関係なく、人として成長できる。
問題なのはむしろ、成功、つまり今よりもよりよい人生を目指すために、魂をダークサイドに売ってしまうことである。
具体的には、自分の利益のためだけに人を利用したりだましたりする。ウソをついてもなんでも、自分だけ得をしようとする。
ライバルを出し抜くために、陰湿な嫌がらせをして足を引っ張り、蹴落とすことに全力を尽くす。
成功を目指す上で道を誤ってしまった場合、このような、人として終わっている行為に手を染めてしまう人も少なくない。
これは本来健全であるべき野心が間違った方向に進んでしまった結果である。
するとかりに成功できたとしても、決して幸せになれないどころか、むしろ成功して不幸になるという、お約束のオチが待っている。
だからこそ大切なのは、成功を目指してもいい。人生を野心を持ってもいい。しかし、人としての道理は守る。
つまり、成功するために清く正しくある必要はないが、最低限、野心を抱くにも、人として捨ててはいけないものがある。
そういう話である。
出典
『ゴッホの手紙 中』(岩波文庫、1961年)