どんなに美しい理想を掲げても、実際に成し遂げるためには数多の苦しみ、困難がある。何かを得るためには、必ず何かを失う。代償を払わずして何かを得ることは不可能だ。
見城徹
人生はいわば、取捨選択の物語だ。
自分が本当に欲しいものを手に入れるために、別の何かをあきらめる。
心からこの世で実現したいことを実現するために、場合によっては、自分の良心だって売らなければいけないこともある。
つまり、人生では無傷で何もかも手に入れることはできない。
足し算で努力すればするほど何もかも手に入れることができる。都合の良いことだけが起こる。綺麗事を語っているだけで願望を達成できる。
そんな人生はありえない。
逆に、人生が取捨選択の物語であることを自覚すれば、自分が何を捨てて、何を手に入れるのか、意識的に選択できる。
だから、何かを失くしたとしても、何かを得たときの喜びの方が勝る。この意味で大切なのは、人生において何もかも手に入れようとしないことである。
何かを得たい。それならかわりに何を犠牲にするのか。そのトレードオフを明確に意識することである。これこそが人生に意図的になるということであり、将来において後悔を残さない秘訣だ。
何かを得れば何かを失う。問題なのは、何を失うか、ということだ。だからこそ絶対に、失ったものを後悔しないようにしたい。
出典
『読書という荒野』