人間は成長し、変わることのできる存在である。しかし、容易に変われない存在でもある。現場の自分というものにしがみついてしまうところもある。
どんなに不都合を抱えていようと、また、このままでは困ることになると頭では分かっていても、とことん困り切るまで、現状を続けようとすることも少なくない。
自分で早く気がついて、生き方を変えられれば、それに越したことはないのだが、そんなふうにはなかなかいかないようだ。
どうにも変えざるをえないような体験があって、初めて本気で変わろうと思い始め、回復のプロセスのスイッチが入ることが、むしろ多いのである。
とことん落ちて、心の底から何とかしたいと思うような土壇場まで追い詰められる体験が、重い課題を抱えた人ほど、必要なのかもしれない。
つまり、逆の見方をすれば、物事がうまくいかず、大ピンチだといえるときほど、抱えてきた課題を克服し、大きく成長するチャンスかもしれないということだ。
そしてそうした状態のときには、運命的な出会いが起きることも多い。なぜなら、ピンチのときほど、人は救いの手を必要としており、必要は発明の母だからである。
岡田尊司
就職の失敗やリストラ、家族との離別、ときに人生には、どうしようもない逆境がやってくる。
今までの自分の人生全てを否定され、「お前はダメだぞ」と人生から突きつけられ途方にくれてしまう、そんな今までの自分のあり方、行動ではどうしようもしがたい大ピンチがやってくる。
それは、筆舌に尽くしがたいほど苦しい経験だ。しかし、幸い、それは新しい自分、新しい人生と出会うチャンスでもある。
マイナスをプラスに変える!
何もかも上手くいかない逆境のときこそ、人は本当の意味で、何もかも新しく生まれ変わることができるのかもしれない。
追い詰められて大ピンチのときは、自分のプライド、意地や見栄、今まで築き上げてきたものが何も役に立たない。
今までの自分のやり方では上手くいかない。新しい何かが必要だ。自分を変えなければならない。
後がないくらい追い詰められてこそ、何もかも捨てて、新しくやりなおすことができる。すると不思議なことに、今までの自分とは想像しなかった何かと出会う。
新しい発想、新しい出会い。逆境と向き合い、ピンチを乗り越えていく過程で、様々な宝物を見つけることができる。
だから最後はめでたしめでたし
試練をクリアしたあとには、そこには一皮むけて成長した、そして新しい自分と出会うことができる。それは、以前の自分よりももっと、魅力的で素晴らしい自分だ。
この意味で、人生はただただ無意味に理不尽が押し寄せてくるのではない。問題や悩みがやって来るときは、必ずそれ相応の理由がある。
だからこそ、どうしようもなく追い詰められてしまったときは、希望を捨てずにこう考えたい。
「今こそが、より良い自分、より素晴らしい人生と出会うチャンスなのだ」と。
マイナスは必ずプラスに変えることができる。むしろ、マイナスがあるからこそ、人生がもっと輝く。自分がもっともっと素晴らしくなる。
つまりはそういう話である。
出典
『愛着障害の克服』