人間は、四十歳までは勝とうと心がけるがよい。
四十歳を超したら、負けまいと心がけるべきだ。ただし、二十代でもあまり勝ちすぎるのはよくない。
勝軍は、五分を上とし、七分を中とし、十分を以て下とする。五分は励みを生じ、七分は怠りを生じ、十分は驕りを生ずる。人は、すこし鈍なるを仕込みたるがよし。
武田信玄
人生をある意味、一番安定して生きていくために大切なのは、適度に挫折を経験することである。
つまり、人生で何かがうまくいく。するとしばらくして失敗して落ち込む。それからまたうまくいく。そんな、適度に失敗した方が、人生長い目で見ると、それが一番安心である。
勝ちすぎが不幸を招く理由
人生何もかもがうまくいく人。勝ち続けてきた人。それは素晴らしいことかもしれないが、致命的な欠点を持つ。それは、挫折を経験できない、という欠点である。
勝ちばかり知り、負けを知らない人はもろい。そして人生勝ち続けてきた人ほど、ここ一番という人生の山場で、大きな負けを喫する。その結果人生が詰んでしまうケースがあまり多い。
高学歴を手に入れて出世に出世を重ねた人が、不正を重ねて逮捕され人生が詰む。そんなニュースはまさに、この典型例である。
勝ち続ければ驕りが生じる。自分なら何をしても許される。そんな慢心が心を蝕み、そして、人を致命的な大失敗へと走らせる。
挙げ句、今まで築いてきたものをすべて、自分でぶち壊し、人生が詰む。これは人生で勝ち続けることの大きな弊害である。だからこそ大切なのは、人生適度に挫折をしておく、ということである。
時々転んで痛い目に遭うくらいがちょうどいい
努力しても報われない。頑張ってきたことがすべてムダに終わってしまう。
それによって私達は、自分は決して完璧ではない。世の中では思い通りにならないことを知ることができる。それによって、心の思い上がりを正され、謙虚に生きていくことができる。
この意味で、人生何度もつまづくこと。失敗続きの人生を送ること。それは決して、不運なことではない。
長い目で人生を見ると、その失敗。その挫折こそ、あなたの人格を高め、そして、人生の夕暮れ時に痛い目に遭わないための、貴重な教訓を与えてくれているのだ。
だから人生勝ちまくる必要はない。適度に挫折し、痛い目に遭おう。そして世の中に失望しよう。ときには自分からあえて、損する道を選ぼう。それくらいで、ちょうどいいのだ。
出典
『戦国武将の辞世』