情けは人の為ならず。人に情けをかけることは結局のところ

笑顔のグループ

きみもいいかげんわかってもいいころなのだが、きみ自身の満足のほかに、他の人々の幸福と平和というものがあるのだよ。君は自分が楽しみたいために、ひとりの人間の一生を滅ぼしているんだよ。

ピエール

「自分のことは大切。だけれども自分のことだけを考え他の人のことを考えなければ、最終的には自分自身の人生がうまくいかなくなる」

他者優先自分謙譲の精神。それは単なる道徳論と考えがちだが、実際のところもしあなたが個人的な願望を追求しつつ自分の人生にOKを出せる結末を迎えたい場合。

自分のことを考えても当然OKだが、他者に対する想像力を働かせることは、とても大切なことである。

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はじめに

「情けは人の為ならず」という言葉がある。これは人に対して恩情をかければ最終的にその行いが自分に戻ってくるという、因果律を説く言葉である。

「身から出た錆」など「自分がしたことがやがて自分に返ってくる」という意味を持つ言葉は様々あるが、あなたが一定の年齢を重ねているなら、その意味を体験的に理解していると思う。

「したこと」が今すぐ返ってくることはあまりないが、一定期間を経て、他の人を通じて「巡ってくる」。特にその行動に感情が伴えば伴うほど、その行動に対する反動は大きくなる。

だからこそ自分のあらゆる行動に対して、「このアクションは他の人にはどんな影響があるだろう?」という想像力を働かせる必要がある。

物事をあいまいにぼかす意味

この世界は人々の集合であり、人々の集合だからこそつねに、他者という存在の影響を受けざるを得ない。ゆえに他者に対する配慮をすることは結局のところ、自分自身の運命に対する配慮でもある。

他者に対して情けをかける行動は自分の命綱を確保することであり、「正義は我にあり」と他者のミスや失敗を見逃さず徹底的に追求し追い詰める行動は、自らの首を締めることもでもある。

だからこそ物事に白黒つけずに「清濁併せ呑む」。他人に対して寛容になることは、この世界を安全に生きていくための必須行動である。

正しいことは正しいかもしれないが、間違っていることが必ずしも間違っているとは言えない。道理で割り切れないことが、この世界にはたくさんある。

自分のことを優先してもいい。ただし

他者に対する配慮は結局のところ自分の運命に対して配慮すること。

私たちは煩悩にまみれた人間である。自分という存在を何においても優先してしまうこと、「自分の考えが正しい」という前提のもとで行動してしまうのは、仕方がない。

だが限度を超えてはいけない。ほどよいラインで欲はとどめておく。

「それをすれば自分が90%得をする」という状況においてもあえて60%に抑えておく。むしろ「あの人は損をしているのでは?」と思われるポジションにその身を置く。

「自分だけ勝ちすぎない」「得をしすぎない」というチョイスを選択的かつ意識的に行うことは、人生という長い道のりを歩む上で、とても大切なことである。

最後に

『人間通』という本がある。私が強く感銘を受けた本の一冊だが、そこで説かれているのは、人間、そして人間が創り出す社会の実像であった。

社会を作り出しているのは人の感情であり、その感情のなかには最も強いものある。それゆえに、「自分のことだけ考え行動する」という選択は、実際のところ自分にとって最善の益をもたらさない。むしろその逆に終わる。

人生は長い。自己を優先しすぎた結果、短期的に幸福を実現したとしても、それが一夜にして消えてしまったのでは意味がない。

だからこそ「他人に親切にする」「謙虚になる、特に自分の立場が良くなれば良くなるほど」という昔からの教えは、人生の安全を確保しトラブルを予防するという意味で、本当に大切なことである。

出典

『戦争と平和(二)』