文学に目覚めることが不幸なことか、幸福なことなのか、私には分からない。一つだけ確実なことは、人間としてこの世に生まれて来ることは、最大の不幸である。そう気づいた時から、人は作家になろうとする。
車谷長吉
「きっと自分の人生はいいことがある」
「自分は特別な人間だ」
誰もが一度はこのように思う。人生へ何らかの期待を抱き、人は将来を夢見る。
しかし、年を取るにつれ、人は夢を失い現実に膝を抱えるようになる。収入、社会的地位、名声、健康・・・etc。
30歳にもなれば、否が応でも「人生の現実」と向き合うことになる。
人生の現実
多くの人は、若いころ自分が抱いた夢や希望が消え去り、不幸に思える人生と向き合う。それは苦しい経験だが、そこからが本当の人生の始まりである。
ある作家は言う。「人生はそもそも苦しみだ」と。
人はこの世に生まれ、日々死へと向かう。どんなに富があっても、出来ることには限りがある。どんなに頑張っても、最後の最後で失敗することがある。
この地上という舞台が、そもそも挫折や失望、苦しみに溢れている。周りを見渡せば、その証拠は探そうと思えば簡単に見つかるだろう。
ポイントは人生に期待しすぎないこと
だからこそ、この世を生き抜くためにはバラ色の人生を期待するのではなく、現実を見て、考え方を変える必要がある。
不思議なことに、人生の苦と向き合った先、人は人生の味わい深さを感じることができる。それが人生の面白いところだ。
そして、人生は案外捨てたもんじゃないことに気がつく。そう、自分の人生はこれでいい。人は人で自分は自分。それを納得できるかどうか。
それが結局、一番大切なことなのだ。
最後に
人生はある意味、自分が若かりし頃抱いていた幻想がすべて打ち破られた瞬間、本当に始まる。
期待どおりの人生を生きていない自分。不満だらけ。苦しみだらけの現実がある自分の人生。それでもなお、どのように生きていくのか。
現実と向き合った瞬間、本当の意味で人生は開眼する。そこからが、本当のスタートである。
出典
『人生の四苦八苦』