この世には、人々がいるだけ、それだけ公正な生き方があるのです。
すべての人は自分は正しく生きていると思っています。それをどう塩梅し、より広い人たちが安堵を得るかが大事です。
羅生門に住む鬼どもさえそう思っているのではないでしょうか。
辻邦生
人間関係で悩まないためにこのことを知っておく。
相手の立場を否定せずそこに配慮を示すこと。人を露骨に否定しないこと。
人は誰もが、心のどこかで「自分は正しい」と思っている。だから、人の意見に従いたくないし、人から命令もされたくない。これが多くの人の本音である。
人は確かに動かせる
有無を言わせず人を従わせるには、上下関係を持つか、利益でつるか、いずれかの方法しかない。それによって、一時的に人を動かすことはできる。
しかし、人に影響を与え、その人の人間性を思想によって根本から変えようとすることなど、考えないほうがいい。
人を「感化」しようとしたり、「教育」によってその人の人間性を変えられるのは、せいぜい小さい子供くらいだ。
本質的な部分においては、決して変えることはできない。その人が心から本当に「変わりたい」と思わない限り。
「人は変えられない」という前提
この世の中は、「我こそが正しい」と思う人々が闊歩する混沌の地だ。
表面上はどうであれ、みんな心のなかで、「自分が正しい、自分が一番」と思っている。だからこそ、人と人との衝突が絶えない。だからこそ、人を変えることはできない。
そのことを前提に、人間関係を考えることで無意味な衝突は避けられるだろうし、人間関係で必要以上に失望することはないだろう。
人との付き合いは、相手の立場を追い詰めないこと。例え、どんなに相手に非があるとしても。例えその人が罪人であっても、だ。
彼らには彼らなりの、正しい理由があるのだから。
出典
『西行花伝』