ある人は、人生に3つの坂があると言った。
1つ目は上り坂、2つ目は下り坂。そして3つ目はまさか。
つまり、人生は順調で幸せなことばかりが続くものではない。どれだけまっとうに、誠実に生きていても。理不尽なことがやって来る。
「なぜ、自分の身にこんな不幸が訪れるのか」という、納得ができないこと。苦しいこと。不安なことがやって来る。
このとき、「自分はツイてるのだから、人生で何が起こっても大丈夫だ」とポジティブに考える努力をすることはできる。
しかし、何をどれだけポジティブに考えても目の前が苦しくて仕方ない。不安でたまらない。そういうことだってある。
それは仕方がない。今ただ、そこにある感情を、決して否定しないことである。
今そこにある現実を受け入れる
たとえばキューブラー・ロスという、人の死について研究した心理学者がいた。
彼女は重要な病気に直面した人が、自分の死を覚悟するまでに、様々な心理的な過程があることを発見した。
しかし、キューブラー・ロス本人が重大な病気になって自分の死を自覚したとき。死の過程を理解しているのも関わらず、どうしようもなく不安で、怯えて、狂いそうになってしまったと語っている。
つまり、怖いものは怖いし、不安なものは不安。それは頭で理解して何とかできるものではないのである。
だから苦しいときは苦しくてもいい。不安なときは不安でいい。まずは、今自分が感じていること。それを否定していないことである。
「こんな弱気ではダメだ」と、無理に自分の気持ちをごまかさないことが大切だ。
認めるからそれは消えていく
本当の意味で、自分の今の感情を受け入れることができれば、そこから次のステップへ進むことができる。
それは、キューブラー・ロスが言うところの受容のステップである。
つまり、今目の目にある感情。それを否定もせずにあると受け入れる。それによって、心は次のステップへと進むことができる。
自分の気持ちを完全に受け入れる。それによって、自分がこれから何ができるのか。今どうすべきなのか。腹を据えて、考えることができる。
ここに来るまでにはまず、どんな感情でも。それがネガティブなものであったとしても、今そこにあることを、受容することが大切である。
そこにあるのは確か。それなら、それを認めて、受け入れるしかない。
ポジティブになることは自分にウソをつくことではない
人生は本当に、いろんなことがある。今順調だったとしても、明日どうなるかは誰にも分からない。
不安なことが起こったり、苦しいことが続いたとき。自分の気持ちを無理矢理ポジティブにする必要はない。
自分の気持ちにウソをついてごまかすよりも大切なのは、自分の気持ちに正直になることだ。
だから不安ならとことん不安を感じればいい。苦しいなら、その苦しみに正面から向き合えばいい。
そうやって目の前のマイナスから逃げずに直面すれば、やがては逆転が起こる。目の前の現実を心から受け入れて、「これから先」に気持ちを向けることができる。
これが本当の意味で、ポジティブになれる、ということである。
最後に
人生で試練がやって来て、これからどうなるか不安で分からないとき。やることなすことうまくいかずに苦しくてたまらないとき。
今すぐ無理矢理、明るい自分。ポジティブな自分になる必要は1ミリもない。
本当に嬉しいなら喜べばいいし、本当に辛いなら泣いてもいい。今は今、感情は必要だからそこにある。
自分にとって必要なものとして、絶対に否定しない。そうすればやがて気がつく。暗闇の先に本当の光が見える、と。