私が両手をひろげても、お空はちっとも飛べないが、飛べる小鳥は私のように、地面を速くは走れない。
私がからだをゆすっても、きれいな音は出ないけど、あの鳴る鈴は私のようにたくさんな唄は知らないよ。
鈴と、小鳥と、それから私、みんなちがって、みんないい。
金子みすゞ、私と小鳥と鈴と
人生には一時期、「自分が持っていないもの」を持っている人に、やたら魅力を感じる時期がある。
自分ができないことをやすやすとすることができる人。自分にはない感性を持って、独特の能力を発揮している人。
そういう人をみると、まるで自分には何もかも欠けているように思えて、自分に自信が持てない。そして、「この人のようになりたい」と憧れる。そんな時期がある。
しかしそれははしかのようなもの。やがて時期が来れば、人に人、それぞれ違いはあるけれど、結局自分は自分で、他の誰でもないということ。
そして、人生には自分にしかできないことがあることに気づく。
あの人ができることを自分はできない。しかし、あの人ができないことを自分はできる。そのことに気づくことが、自分の人生を生きること。
それが、自分にしか歩めない道を進む第一歩である。
そう、人は人、みな、違う。才能や能力。歩む道。運命。何もかも違う。だから自分と人が違ったとしても、それでいい。
大切なのは自分は自分。自分ができること、自分にしかできないこと。ただそれに気づけばいい。ただそれだけの話なのだ。
出典
『金子みすゞ童謡集』