恋は燃える火と同じで、絶えずかき立てられていないと持続できない。だから希望を持ったり不安になったりすることがなくなると、たちまち恋は息絶えるのである。
ラ・ロシュフコー
人を好きになるというのは実に不思議なことだ。
まだ恋が手に入らないうちは、相手の一挙一動に不安になり、心を乱され、それによってますます相手にハマっていく。
ところが、恋が手に入り、相手の姿が虚像から実像へ近づいてくると、途端にそれまでの高ぶっていた気持ちは萎える。
そして、相手の一挙一動にも心が動きにくくなる。つまりは早い話、手に入らない恋ほど長くハマってしまうが、手に入ってしまった恋というのは、それほど喜びを感じない。
だから世の中、相手がいるのに浮気をする人々が一定数いるのは、何の不思議もない。
そのことを考えると、恋を長続きさせる秘訣というのは、決して相手に安定感を与えないことなのかもしれない。
「この人はいつもそばにいてくれる」
「この人は私を会いしてくれる、だから決して離れてはいかない」
こんなふうに相手に思われたらお終いである。
逆に、
「この人は本当に私のことが好きなのだろうか」
「私のもとを離れてしまうのではないだろうか」
適度にそんな不安を与えた方が、むしろ関係が長続きするのかもしれない。
もちろん、不安を煽りすぎてもダメなのだが、完全に関係が安定しまうと、恋の火が消えてしまうのは早い。
しかし恋の火が消えてもなお、一緒にいたいと思う人がいたとしたら、それこそが愛なのかもしれない。
出典
『ラ・ロシュフコー箴言集』