この世はままならないものである。
このような世の中をうるさく感じ、一生を平穏に過ごそうとすれば、世間から離れた山の中にでも住むほかはない。
せっかくこの世に生まれて来たのだから何かしたいと思えば、必ず意のままにならないことが起こるものだ。
逆境というのは多くの場合これを意味するのではないか。そうであるなら、逆境は世の中のすべての人が逃れられないものということになる。
新渡戸稲造
昔の偉い人は、人生とは悩みの連続であることを喝破した。
すなわち、一難去ってまた一難。本当に、心の底から安心できるときがやって来るとすればそれは、人生が完全終了したとき。
逆に言えば、生きている限りは必ず何かで悩むことになる。それが人生という仕組みである。
何かが良くなれば何かが悪くなる
例えば仕事がうまくいった。収入がアップした。
ドラマや映画の世界ではそこで、「あなたは人生が成功しました。あなたは幸せになりました」となる。
が、現実は違う。
仕事がうまくいけばなぜか家族とうまくいかなくなる。収入が増えればお金目当ての悪い人がやって来てトラブルに巻き込まれる。
人生何もかもうまくいき、悩みなど一切ない。そんな人生は仕組み的に不可能なのである。
悩みがあってそれでいい
この意味で、人生から完全に悩みを失くす努力をする価値はない。なぜならそれは不可能だからである。
今何かに悩んでいる。あなたがそれを必死に解決できたとしても、また別の悩みが登場する。
人には人それぞれの人生に応じた悩みが降りかかる。
だからお金持ちはお金持ちなりの悩み。モテモテな人はモテモテな人なりの悩み。あなたが「うらやましい」と感じる誰かでさえ。
必ず何かに悩んでいるのである。
悩みは解決するのではなく向き合うのが正解
この事実を知れば、自分の悩みがどうだとか、人と比べてどうだとか、いちいち悩むことがアホらしくなってくる。
なぜなら今自分が悩んでいることはまさに、自分自身の身の丈にあった悩みだからである。
そして誤解を恐れずに言えば、あなたはその悩みを解決する必要はない。
悩みを解決したところで、また新しい悩みはやって来る。それなら、わざわざ急いでその悩みを解決する意味があるのだろうか?
解決できればそれでいいかもしれないが、できなくてもそれでいい。そういう話である。
無理なことは無理でいい
結局、人生を生きることはそういう理不尽な現実と折り合いをつけて生きていくことである。
だから人生自分の思った通りにならなくても。悩みを解決できる素晴らしい自分になれなくても。
別にそれはそれで、構わないのである。
大切なのは人生そのものを投げ出さないこと。目の前にはいろいろ、理不尽で、思い通りにならないことがたくさんある。
しかし自分なり、無理せずほどほど、進んで行ければそれでいい。それだけでいいのである。
最後に
生きていく限り、悩みは決してなくならない。思い通りにならないことがたくさんある。
でも「人生とはそういうものだ」と受け入れていれば、思い通りにならなくても、心がポッキリ折られることはない。
つまり人生に期待するのはかまわない。しかし期待のし過ぎはNGである。最初から、順調に人生が進んでいくとは思わないことである。
何かがうまくいけば何かがうまくいかなくなる。だから無理せずほどほど。自分のペースを最優先。頑張りすぎないくらいがちょうどいい。
生きていく限り悩みは決して、なくならないのだから。
出典
『逆境を越えてゆく者へ』