自らの成長のためにもっとも優先すべきは、卓越性の追求である。そこから充実と自信が生まれる。
能力は、仕事の質を変えるだけでなく、人間そのものを変えるがゆえに重要な意味を持つ。能力がなくては、優れた仕事はありえず、自信もありえず、人としての成長もありえない。
ドラッガー
アメリカの偉大な経営学者は言う。結果を出すには卓越した能力、突出したスキルを持つことだ、と。
これはロールプレイングゲーム(RPG)をしたことがある人なら分かりやすい話だと思うので、それを例に分かりやすく説明したい。
例えるならこういう話
RPGとは個性を持ったキャラクターと協力して物語を進め、目的を達成するゲームだ。
RPGでは、主に次のようなキャラクターが登場する。
・筋肉バリバリの戦士タイプ。高い腕力で大ダメージを的に与えることができるが、動きがのろい。
・魔力が高い魔法使いタイプ。多くの敵を魔法で倒すことができるが、体力が低く、攻撃されると脆い。
・敵の攻撃をガンガン避ける忍者タイプ。素早く動くことができるが、火力が低く固い敵の前には役立たない。
どのタイプも一長一短だが、それぞれ個性があるので使い道がある。
戦士はどのキャラクターよりも体力と力が強いが、魔法に弱い。
魔法使いは魔力が高いので攻撃の幅が広いが、体力が低いので死にやすい。
忍者タイプは敵の攻撃を避けて奇襲的な戦法ができる一方、攻撃力は戦士にはかなわない。
問題はこういうこと
一番困るのは、どの能力も中途半端なキャラクターだ。
力、魔力、回避力、どの能力も半端なので、敵が強くなり状況が厳しくなれば、全く役に立たなくなる。つまり、何らかの目立った能力がなければ、どんな場面でも中途半端な働きしかできない。
だからたいていRPGの世界では、中途半端な「万能」キャラは後半はベンチ入り要員になるのがお約束。これはゲームだけの話のように思えるかもしれないが、実際の世界でも同じことである。
中途半端な能力だから中途半端な働きしかできない。なぜならそれは、他の人と代替可能な人材であること。そして、いつでも首を切られるリスクがある人材であることを意味しているからである。
なんでもできる人はある意味なんでもできない人。突出したスキルを持つ人材が高く評価されている現代において、非常にわりを食いやすい存在である。
これが生き残るための解決策
ではどうするか。「これだけは人よりも上手くやれる!」という分野を見つけて、そこで頑張ることだ。
自分の苦手なことを伸ばすよりも、できそうなこと、頑張れることにトライしたほうが、最終的には生き残れる可能性が高まる。
苦手を普通にすることに労力を費やすより、得意なことをもっと得意にするほうが、成功の確率は高まる。成功の第一歩は、得意なことを見つけ出すことだ。そして、その分野で卓越した能力を身につけることだ。
大切なのは尖っていてもいい。
「これだけは自分ができる完全な個性でありオリジナルである」というポイントを持つ。そして、それを高く評価してくれる場所を見つけることである。
そうすれば世の中で、驚くほど評価されることができる。これがすなわち、自分を活かす本質である。
出典
『プロフェッショナルの条件―いかに成果をあげ、成長するか』