自己検証、自己嫌悪、自己否定の三つがなければ、人間は進歩しない。
見城徹
端的に言うと、自己否定できる人は、人として正常である。
自分はダメだ。自信が持てない。今の自分にダメ出しをして、自分で自分を認めない。
だからこそ、ダメな自分を克服するために、人は今よりももっと、良い自分を目指すことができる。
むしろ問題なのは、「自分は絶対、今の自分でいい」と自分を完全に疑わなくなってしまったときである。そのときある意味、人として終わる。
完全な人などこの世にはいない。
どんなに素晴らしい才能がある人でも。どんなに優れた頭脳を持っている人でも。どんなに立派な人格者であっても。
人である限り、必ず間違いを起こす。
そして、今どれだけ人生がうまくいっていたとしても、その成功が永遠に続くことはない。
にもかかわらず、「自分は完全にこれでいい」と、自分の正しさを100%確信している。これは完全に自我の肥大化であり、破滅の序曲である。
そう遠くない未来で、「どんでん返し」がやって来ることだろう。
だからこそ、本当に優れた人は人生において何度も何度も、自己否定を繰り返す。
「自分はダメだ」
「自分がやっていることは間違っているかもしれない」
こうして自分に自分でダメ出しをして、等身大の自分を見失わないようにする。それは、自分に過剰な自信を持つよりも圧倒的に健全である。
この意味で、今あなたが「自分はダメだ」と感じること。その感覚はまさに、あなたが人として正常である証拠である。
その感覚を大切にして、今よりもっと「ダメじゃない自分」を目指せばいい。それが正しい、自己否定の使い方である。
出典
『読書という荒野』