ありのままを受け入れる。
そして、今ここに幸せを見出す。
それがBeingの人。
2つの価値観
「そのままの自分は価値がない。だから何かを加えることで価値のある自分を目指そう」というHavingの価値観がある。
学歴、富、成功。社会的な評価。これらを獲得することで、価値を見出す生き方がHavingの人の生き方だ。
一方、世の中にはこんな人もいる。
たくさんお金を持っているわけでもない。特別な才能があるわけでもない。モテるわけでもないし、学歴があるわけでもない。
人に誇るもの、社会的に認められるものを持っていない。でも、幸せで人生に満足して暮らしている、そんな人がいる。
今現在の自分を、プラス・マイナスの補正なく、あるがままに受け入れている人。こういう人を、Beingの人と言う。
達成感と失望感
世の中が発展し、社会が経済的に成長していくためには、人の欲望が大きな役割を果たす。
「人よりよくみられたい」
「贅沢したい」
「もっとラクがしたい」
このような欲望は社会を発展させる働きがある。
その一方で、欲望には歯止めがない。行き過ぎた欲望は、逆に人を不幸せにする。
Beingの人は、行き過ぎた欲望がない。今の自分に満足して、その運命を受け入れている。達観しているわけでもなく、今の現状を、あるがまま見つめている。
モテない自分、成功していない自分。金持ちでない自分。能力に限界があり、思い通りにできないことがある自分。
このような現実の自分の状態を、プラスマイナスの物差しで測ることなく、あるがまま受け入れている。
「現状はそういうものだ、それはそれでいい」
このような価値観を持っている人だ。
彼はこのような状態で満足している。なぜなら、何かを持っていること、成功していることなどの外的な条件と幸せとは、何の関係がないということを経験から知っているからだ。
手に入れることは必ずしもプラスではない
何かを得ることは大きな達成感を得ることができるが、それを得られないことは大きな失望感にもつながる。
しかも、悪いことに、人の欲望には終わりがない。
月30万円の収入を稼いでいた人が月100万円の収入を稼ぐようになったとする。しかし、彼はそこで満足できず、さらに「もっと」を求めるようになる。
人の欲望には「これでいい」というところはなく、さらに多くの欲望を引き寄せてしまう。
欲望の拡大に応じて、欲望を実現できる運と力がある人はマレだ。どこかで限界が来る。そのとき、その反動が一気に彼を不幸にする。
人間の価値
Beingの人は欲望の虚しさを経験的に知っている。そして、何も持っていない、素の自分と向き合う。だからこそ、ありのままの自分を認め、受け入れることができる。
「お金を持っていない人は価値がないのか?」
「社会的に成功していない人には価値がないのか?」
「学歴がない人は価値がないのか?」
もちろん、そんなことはない。しかし、今の競争社会、そんな当たり前のことすら、忘れてしまいがちだ。
テレビをつければ強い刺激にさらされ、「これこそが価値があるものだ!」と一方的に提示される。常に競争にされされ、誰もが人との比較のなかで、Havingの価値観を植え付けられている。
本来、人はそのままで価値があるのだ。
誰もが、何かの役割を負っている。その役割は、その人しか果たせない大切なもの。人間の価値にお金や地位、名誉は関係がない。Beingの人はそのことを知っている。
だから彼はいつも穏やかで、落ち着いている。こころも安定し、どんな体験も、そのまま受け入れている。
彼の心は平和であり、満足している。こういう人だけが、人生の最期を穏やかに受け入れることができるのかもしれない。