自分の意志と異なるからといって状況に逆らうだけでは、一向に前進しない。人生には、どうしても抗いがたい運命というべきことがある。ならば、「これもご縁」と前向きに考えたほうが、よほど身のためになるのだ。
渡部昇一
人生は何が起こるか分からない。
いくら、前向きに努力し、より良く生きるために努力していても、人生がうまくいくかどうかは別の話である。
進みたい道があるにも関わらず、流れに流されて、自分が願った場所とは全然場所で生きることになる。人生にはそんな「理不尽さ」があるのだが、問題はそのときだ。
今や夢や希望は破れ、自分が思った場所とは全然違う場所に立っている。
このときに、「もう自分の人生は終わりだ」と考えるか。それとも、「この場所に自分がいるのも、きっと何かのご縁かもしれない」と考えるか。
たとえ同じ状況だったとしても、考え方さえ変えることができれば、その後の展開は全然違ってくる。この意味で大切なのは、人生で何が起こっても完全に絶望してはいけない、ということだ。
人生の配慮は奥深い。幸運だと思っていたことが不運の始まりであり、そして、不運だと思っていたことが、幸運の始まりになることだってある。
だから、今自分が歩んでいる道がかりに不本意であったとしても。自分がいるべき場所にいないように感じたとしても。
今そこにいるということは、何らかの縁があるからなのかもしれない。少なくとも、その場所にいるべき何らかの必然性がある。
そう、人生にムダはなし。自分にとって必要だからそうなった。「これもご縁」と考えることが大切なのだ。
出典
『渡部昇一の思考の方法』