嗚呼人間、この弱きもの

腐敗

人は金と名誉に弱い。弱すぎる。そして、不安と恫喝に弱い。弱すぎる。

丸山健二

古今東西、人が求めるものが2つある。それはお金と名誉だ。

どんな権力者も、どんな成功者も、そして一般の市井の人ですら、富と名誉を求める。なぜかというと、お金と社会的地位が人間の生存本能に関わる、根本的なものだからである。

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お金は欲しくて当然の話

お金があれば、豪邸に住んで、ブランドのものの服を買って、旅行へ行って、したいことは何でもできる。イヤな仕事もしなくていい。毎日が日曜日。

この例はスノッブ的だが、実際にお金があれば基本的に不便はしないし、何よりお金がない状態に陥ることによる不便を避けることができる。

「お金がない」という経験をした者なら誰でも、お金の大切さ、力を嫌というほど味わう。だからお金を手に入れるため、手に入れたお金を守るため、どんなこともしてしまう人さえ生む。

お金があれば、餓死することはないし、生きていくことはできるので、生存本能の強い人ほどお金を求め、そしてお金を失うことへの不安が強い。

この意味で、ある程度の金銭欲を持つことは人として正常であると言える一方、お金を課題に評価して執着し過ぎると、その先にはついにダークサイドが待っている。

行き過ぎたお金への欲求が、人としての間違いを犯す原因になってしまう。

問題は自我の肥大化

お金に付随するのが、名誉や地位だ。

お金を持つ人には、なぜかよそから人が集まってきて、お金を持つ人は、誰よりも重要で、大切な存在のように扱われる。

そのとき、まるで自分がまるでこの世界の主人公のように、何でもできるように感じられる。これは、心理学でいうところの、自我意識の肥大化だ。

本当はチヤホヤする人にはそれなりの理由があるのだが、自我が肥大しているときはそんなことにさえ気がつかない。

仮に、あなたのことをチヤホヤする人がいても、それはあなたに心から敬意を示しているわけではなく、何らかの理由で演技しているに過ぎないことを忘れない方がいい。

あなたがお客だから。有名だから。お金を持っているからetc・・・。理由はいろいろあるが、人からチヤホヤされることを快感に感じるようなら、その状態は一種の内的な危機である。

じっと自分の心を見つめてみれば、心のなかに、不安や恐怖といった、ネガティブな感情があるのを見つけることができるだろう。

最後に

お金に執着すること。「自分は偉いんだ!」という名誉に執着すること。それらは生存に関わる本能的な部分なので、多かれ少なかれ、誰しも持っている弱点である。

ただ間違ってはいけないのは、だからお金を追い求めることがダメというわけでもないし、「出世したい!」という気持ちを持つことが間違っているわけでもない。

大切なのは、行き過ぎないことである。

お金は欲しくてそれでいい。人からチヤホヤされてくてもいい。ただ忘れてはいけないのは、お金があろうとなかろうと。人からチヤホヤされようとされまいと。

自分が何者であるかを忘れない。そして、人として正しいことをすればいい。ただそれだけの話である。

出典

『人生なんてくそくらえ』