人は手に入れられないものに憧れる。「お前には無理だ」と言われたらそれが一層欲しくなる。
未帆
どうしようもなく欲しくて欲しくて仕方ないもの。
それを手に入れるために、あらゆる努力を惜しまない。そして、それを手に入れる。
でも、不思議なのは、それを手に入れたとき、「なぜこれがそんなにも欲しかったのか?」というくらい、それに興味がなくなってしまうことだ。
手に入れるまでは、それは高嶺の花であり、憧れの存在だった。でも、いったん自分の手の中におさまると、なぜかどうでもよくなり、空気のようなものになる。
そして、また別の何かが欲しくなって、手にしたものが無価値になってしまう。
多かれ少なかれ、こういう経験をするものだが、自分が持っていないもの、手が届かなさそうなものほど、人の所有欲をそそるものらしい。
こうして私たちは、次から次へ、「これが欲しい!」という欲望にかられ、動き出す。新しいものを手に入れる。欲しいものを手に入れるべく動き出す。
それは確かに刺激的で、楽しいことかもしれない。欲望に動かされるのは人のサガなのかもしれない。
でも、ほんの少しだけ立ち止まって考えたい。「それは本当に欲しいものなのか?」「ないものねだりしているだけではないか?」と。
何が大切でそうでないのか、何が本当に欲しいのか。
欲望の奴隷になり、ケツを叩かれている限り、自分にないものに意識を向けている限り、自分の人生で本当に価値があるものは手に入らないだろう。
ないものに憧れてそれが欲しくなる。でもいつかは、自分が今持っているものの大切さに気ずきたい。それこそが、本当に価値があるものなのだから。
出典
『モンスター』