「人のことを言えない人」が抱えているもの

私を見てと主張する女性

自分についての考え方、感じ方を抑圧する。すると結果として認め難い思考を煙滅しようとする努力が、その思考を耐え難いものにしてしまうのです。

人は不安な気持ちから、小さなことで悩みます。些細なことで縛られます。この不安な状態が、抑圧された行動へ向かっていく原動力なのです。

加藤諦三

『テレフォン人生相談』という本に、やたら他の教授の業績に対して批判的な教授の話が登場する。

彼は人の実績が気に食わない。優れた実績を持つ他の人をこき下ろし、激しく非難する。では、その批判的な行動の原動力になっているものは何か?「自分の実績への自信のなさ」というのが、著者の回答である。

自分に自信がない。だからこそ他人の活躍は自分にとっての脅威となる。理屈はシンプルで、とてもわかり易い。そして、この教授のような例は、世間を見渡せば例を挙げるのに事足りない、普遍的な現象である。

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はじめに

以前、「人は自分の内側に抱えた問題や不満を外へと向ける」という内容の記事を書いた。ここで書きたかった最も重要なメッセージはとてもシンプルである。

「人は、自分の内にある問題や悩み、弱さを、外に見出す」

他者に対する攻撃的な態度や批判的な言動、マウンティング、フレネミー的な行動、それらの行動の動機となる根本的な原因が、それをされている人ではなく、それをしている当人に原因の発端があるというのが、心理学が示す見解である。

結局のところ、「すべての出来事に意味がある」という言葉は、どんな出来事であれ、それが存在する相応の理由がある、ということを意味している。

本当の意味で「自分を変える」ということ

私たちにとって大切なこと。それは、自分自身が抱えている問題や弱さを自覚し、向き合うことによってそれらを「統合」し、自らの成長の糧としていくことである。それはいわば人間力が問われる課題である。

他者を通じて見えている「外側の問題」を認識する。その上で、根本の原因に気づき、受け入れ、改善していく。こうして真の意味での問題解決を実現していく。それこそが成長であり、本当の意味での「自分を変える」という行為である。

不満や批判を口にするのは容易い。だがそれらの発端がどこにあるのか?本当の意味で課題を解消するためにはどうすればいいのか?問題の「本質」に気づいた瞬間、私たちは文字通り、一皮むけることができる。

人は鏡。すべては自分が

本当に偉い人はとても謙虚である。優れた実績を残した人ほど後輩の育成に積極的である。魅力的な人ほど人の魅力を評価するのに何のためらいもない。こうしたことにきちんと理由がある。

一方で、常に「批判されるべき」対象や「不満」を感じさせる対象を必要としている人は、いつでもどこでも、気に障る問題や、正されるべき課題を簡単に見出す。

そんな彼らの身近に、なぜか写し鏡のような人物や物事が用意されるのは、決して偶然ではない。「類は友を呼ぶ」現象とはある意味、他者に関する事柄ではなく、自分自身を知るための現象と考えることもできる。

私たちは同質の存在を知ることで自分自身を知る。そして、与えられている気づきに気づくことなく、原因は外に探し続けるならば。有名な白髪のおじさんが説くとおり、「まるで成長していない・・・」というループを、繰り返すことになるだろう。

最後に

「人間理解」というのは、他者を知ることは当然の上、自分自身を知ることでもある。

自分を知らない人は他者を知ることができない。この意味で、

「自分についての考え方、感じ方を抑圧する。すると結果として認め難い思考を煙滅しようとする努力が、その思考を耐え難いものにしてしまう」

という心理的なメカニズムを知っておくことは、とても重要である。

この心の働きを理解しておくことで、自分自身、そして他者の言動の根っこにある本当の「原因」が分かる。すなわち、「外にあるものはすでに内にある」のである。

出典

『テレフォン人生相談』