自分は変えられない、それを悟った瞬間から

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チャンスを待つ男

あなたはダメ人間なんです。それはもう一生変わらないんです。

突如、明日からもてはじめることもできないでしょうし、明日から頭がクルクル動くようにもならないでしょう。

あなたは、永遠にもてないまま、無能なまま、そしてそのまま死んでいくことでしょう。

それはたまらないだって。まだ、そんなことを言っているんですか?

たまらなくっても、たまっても、とにかくそれが真実なんだからしかたない。ですから、それをよく認めて、あきらめて生きるしかないのです。

背丈が160センチメートルの男は、どんなにあがいても180センチメートルの男にはなれないんです。

下品な家庭で育ったあなたは、育ちのよい上品さを身につけることはできないんです。

頭の悪い遺伝子をふんだんに受け継いだあなたは、金輪際頭がよくなることはないのです。

しかも、このすべてにあなたの責任はない。あなたが選んだことなんか、このうちに一つもない。

ああ、そう考えると、すべてはなんと理不尽なことでしょう。そして、なんと心がすっきりすることでしょう。

中島義道(哲学者)

世の中、いろんな人がいて、いろんな人生を送っている。

ある人は良い条件に恵まれ、障害も少なく、すいすい楽々、人生を楽しんでいるように見える。

一方、ある人は、才能や環境、容姿に恵まれず、「なんでこんなに人生は大変なのか・・・」と苦難の道のりを歩んでいる。

人生に恵まれるものとそうでないもの、一体違いはどこにあるのか?

もしかしたら、そこには確固たる理由はないのかもしれない。ただ運があるかそうでないか、それだけの、理不尽なものなのかもしれない。

こんなふうに考えると、あまり良い気持ちになれないかもしれないが、人生に無意味なことは何一つない。

もしかしたら、条件に恵まれていないこと、人生に恵まれていないこと。そこにこそ、実は大切な意味があるのではないだろうか

勉強が苦手で学歴がない。どれだけ頑張っても勉強ができない。

人間関係が苦手で、いつも学校や職場で浮いてしまう。

友達や恋人ができず、人生ずっと孤独。

「俺はここがダメなんだ」というところに、自分を自分たらしめる、意味がある何かが見つかるかもしれない。自分が進むべき道、ヒントが隠れているかもしれない。

だから、「俺はダメだ」と思ってもいいのだ。それを否定する必要はないのだ。

マイナスにはそれ相応のプラスがある。マイナスをひっくり返せば、「そうか、だからこんな障害があったのか」ということが分かる。

それを見つけていくのが人生の楽しみであり、なぜ今までの人生が障害続きだったのかを説明する、必然的な経験だ。

だから、わざわざ人は「別の誰か」になろうとしなくていいのだ。変わろうとする必要はないのだ。ダメな自分でいいのだ。そこには絶対、何かしらの意味があるのだから。

出典

『ぐれる!』(新潮新書、2003年)